
与論徳洲会病院は「いつでも、どこでも、誰でもが最善の医療を受けられる社会」を目指す徳洲会の29番の病院として平成8年1月に与論島に開院しました。
人口約5200人の与論島唯一の入院施設を持つ病院であり、島の救急,急性期,回復期,慢性期,終末期医療及びかかりつけ医としての役割を担っています。救急搬送は年間約150人、24時間100%を受け入れ、当院対応困難な病状の患者様の年間約20件の島外搬送を行ってます。
当院は病院としての設備(CT,MRI,超音波検査,上下部内視鏡,腹腔鏡)はある程度整えていますが、特徴として霊安室がないことが上げられます。与論では在宅死率が2016年頃まで70-80%程度と高かったからです。
与論の家には神棚が祭られ、そこにいらっしゃるのは、祖父母を含めたご先祖様です。
毎朝お水を毎夕お酒をお供えし、月命日にはお食事をお供えします。ご先祖様はいつも自分たちを見守ってくださっており、日々語りかけ、日常の報告やお願い、感謝の声かけをしています。神棚のある自宅は、ご先祖様と結ばれている身近な場所であり、与論での在宅死とは、家族や親戚のみならず、ご先祖様にも見守られ息を引き取るということなのです。その様子は子どもたちも見つめています。ご先祖様との距離の近さ、感謝の気持ち、死生観によって与論の在宅死は引き継がれており、当院には霊安室は用意されていないのです。
又、当院の特徴のもう一つは、電子カルテに患者様の笑顔の写真があることです。多くは前院長の久志安範先生が撮られたものです。日常の臨床業務は多忙な事もあり、ついつい患者さんの疾患や検査結果に意識が集中してしまいがちですが、笑顔の写真を見ることで、医療行為は患者さんの笑顔、健康を守るために行っているという原点を思い返せます。
医療の高度化、分化が進み、社会背景も変化するなかで、与論の感謝の文化、死生観をどう守り続けていくかは大きな課題です。島の方々の健康と生活、そして笑顔を守り続けられるよう、当院は微力ながら全力で頑張っていきたいと思います。